















青単デルバーの使い方
サンプルレシピ
■Main
2《ボーラスの占い師》Augur of Bolas
4《秘密を掘り下げる者》Delver of Secrets
4《フェアリーの悪党》Faerie Miscreant
4《深き刻の忍者》Ninja of the Deep Hours
4《呪文づまりのスプライト》Spellstutter Sprite
2《尖塔のゴーレム》 Spire Golem
4《対抗呪文》 Counterspell
3《魔力の乱れ》 Force Spike
3《変異原性の成長》 Mutagenic Growth
4《思案》 Ponder
4《定業》 Preordain
4《断絶》 Snap
18《島》 Island
■Sideboard
3《無効》 Annul
2《珊瑚の網》 Coral Net
2《払拭》 Dispel
2《凍結燃焼の奇魔》 Frostburn Weird
3《はらわた撃ち》 Gut Shot
3《水流破》 Hydroblast
基本
ーデッキの仕組み
青単デルバーは典型的なクロックパーミッションです。
デルバーこと《秘密を掘り下げる者》を中心とした軽量な飛行クリーチャーを展開し、《対抗呪文》などの打ち消し呪文ででそれらを守ったり、相手の進行を阻害することでライフを削り勝利します。

ー 歴史
長年、Tier1に君臨し続けたデッキだったのですが、
- 《フェアリーの大群》《宝船の巡航》《噴出》《目くらまし》といった採用カードの禁止
- 《炎樹族の使者》採用のストンピィの登場
- 《アーカムの天測儀》登場からのジェスカイ氷雪/4C氷雪の隆盛
により、一時はTier1はおろか、Tier2ともいえない状況となっていました。ですが、《アーカムの天測儀》が禁止されたことにより絶対的に不利であったジェスカイ氷雪/4C氷雪がメタから消滅し、再びメインメタに復帰できそうな情勢となりました。
いずれにせよ、その歴史の長さからも、多くのPauperプレイヤーにとって愛され、憎まれた名デッキの一つであるといえるでしょう。

ー プレイング
《定業》 《思案》という他フォーマットで禁止されている優秀なカードも多く採用されこそしていますが、豪快な呪文は少なく、フェアデッキらしいフェアデッキといえます。
よくいえば柔軟、悪く言えば中途半端な構成をしているため、対戦相手との対話が非常に重要なデッキであり、環境理解を前提にしているデッキです。
どのデッキでも言えることだとは思いますが、「相手がされて嫌なことをする」のが特に重要なデッキであり、相手のことを知っている必要があるからです。
分かりやすい例でいえば、トロン相手には、最速でデルバー変身や忍者着地を狙うべきですし、呪禁オーラは、《アルマジロの外套》《怨恨》といった本当にやばい呪文が来るまで打ち消しは我慢すべきでしょう(《祖先の仮面》はチャンプブロックでやり過ごすことも視野に入れましょう)。
土地の数・種類や、唱えられる呪文などの限られた情報から、デッキタイプだけでなく相手の手札やプランを推測し、対応策を打つ……言うのは簡単ですが、難しいです。
しかし、対戦相手との駆け引きの応酬が存分に行えるので、特にインスタントタイミングでの空中戦が好きな人にはオススメできるデッキです。

応用
ーSSSを着地させられるか
デッキ名にもなっているデルバーですが、
デッキの根幹は実はデルバーではなく《呪文づまりのスプライト》です(ここから、青単フェアリーという名を使っている人も少なくありません)。
英語名《Spellstutter Sprite》から通称「SSS」とも言われる彼女を、うまく打ち消しに使えるか、そして忍術で再利用できかが、このデッキのプレイングの一つの山となります。
重要な点として、SSSの能力は「場に出ているフェアリーの数」で決定され、解決時の数が足りなければ、不正な対象となります。したがって、着地後にフェアリーを除去されることは、クロックを失うばかりか打ち消しすらできなくなる危険があります。極力、避けなければいけません。
あくまでSSSは「打ち消す」ことが重要であり、「重要な呪文を打ち消す」ことが重要ではないと考えています。もちろん、重要な呪文を打ち消せればそれに越したことはないのですが、対戦相手もSSSが厄介であることは理解しているので、警戒しています。
そこで、重要な呪文を打ち消すことに拘らず、相手が「同一ターンで重要な呪文を通そうとしていない」かつ「安全にSSSで打ち消せる」ような状況では、(もちろん例外はありますが)積極的にSSSは切ったほうが良いと考えています。
とにかく、SSSの能力に対応で除去られてフェアリー数が足りない状況にならないように細心の注意を払いましょう。
青単デルバーはコントロールデッキではなく、クロックパーミッションデッキです。SSSは打ち消し呪文であると同時に、パワー1とはいえ大事なクロックです。早めに着地させれば、それだけキルターンは早まります。

ー青単"ノー"デルバーについて
デルバーこと《秘密を掘り下げる者》の魅力とはなんでしょうか?
実は、考えてみれば《秘密を掘り下げる者》は「飛行」かつ「低マナ・高マナレシオ」という以上の価値はありません。それが高価値なので使われるわけですが、環境上の理由などから、「低マナ・高マナレシオ」の重要性が低くなったとしたら?
青単デルバーは、青単"ノー"デルバーになります。余談ですが、おじさんとしては、インベイジョン時代の「ファイアーズ」から「ノーファイアーズ」への移行を思い出しますね。
現在、青単はノーデルバーになりやすい環境にあるといえます。では、なぜデルバーの価値は低くなったのか。理由は以下のようなものになります。
- アグロデッキには防戦にならざるを得ず、クロックで勝負できない
- 必ず3/2飛行になれればいいが、確率に頼ることになる
- コントロールデッキではいなくても間に合うケースが多い
- 《フェアリーの予見者》というライバルが登場した
- 《潮流のマントル》により、1/1は2/3になり、3/2よりも2/3のほうが環境に適している
つまり、デルバーは現在の環境においては「帯に短し襷に長し」という状況といえるでしょう。
しかし、1マナ3/2飛行が弱いはずがありません。デルバーは常に主役の座を狙っています。
ーサイドボーディング
青単デルバーのサイドカードは、採用理由に困るようなカードはそれほど多くありません。
エンチャント・アーティファクトが多ければ《無効》を入れるし、赤いデッキには《水流破》を入れるし、インスタントが多ければ《払拭》を入れます。
注意したい点として、赤が含まれるからといって、雑に《水流破》を複数枚入れるべきではないということです。赤いカードは《稲妻》《雪崩し》《感電破》といった火力だけが採用されているケースは少なくありません。そのいずれもがインスタントなので、《払拭》の方が受けが広いです。特にボロスと対戦するケースでは気をつけましょう。
さて、とはいえ、入れるカードはそれほど困らないでしょう。問題は抜くカードです。
執筆者も自信がないですが、サイド後はタフネス1へのヘイトが高まっていると予想されるので、フェアリーだけでなく、思い切ってデルバーを抜くことも積極的に視野に入れましょう。
また、サイドの多くは呪文なので、サイドの呪文を採用しクリーチャーを抜く場合には、「クリーチャーがいることを前提としているカード」を合わせて抜いて調整することも検討しましょう。具体的には、《深き刻の忍者》《変異原性の成長》などが該当します。ただし、《深き刻の忍者》は回れば勝てるカードなので、無批判に抜くのは禁物です。

ー デッキアレンジ
- フェアリーの予見者
- 占術がデッキの安定性に寄与
- デルバーや《ボーラスの占い師》など、相性の良いカードも多い
- 《フェアリーの悪党》と違い直接的なアドにならない点に注意
- フェアリーの決闘者
- バットリにもなるフェアリー
- 2マナが重いものの、特にボロス系に有効
- 潮流のマントル
- 少ないスキで貧弱なクリーチャーを強化できる
- 《変異原性の成長》がライバル
- 海賊の魔除け
- 数少ない青い除去
- 強化にも使え、応用力がある
- 《リバーボア》を除去できるのが偉い
- 剥奪
- 5枚目の《対抗呪文》として
- 1枚までであればテンポロスはプレイングで十分カバー可能
- 論理の結び目
- トロン・エルフ以外では事実上の5枚目の《対抗呪文》として機能
青単デルバーへの対策
青単デルバーは現在のところ、それほど有力なデッキではありません。したがって現在にあって、青単デルバーへの対策はむしろ「本当に青単デルバーは対策すべきなのか」をまずは考えるべきでしょう。
とはいえ、少数ながら青単デルバーは今でもリーグで遭遇しますし、入賞デッキにもいくつか含まれているデッキではあります。
「対策をすべきだ」と判断する場合は以下を参考にしてください。
大きく、青単デルバーは以下の4つの弱点があると考えられます。
1. 生物を含む、着地したパーマネントに弱い
2. タフネス1が多く全体除去に弱い
3. 2/2以上の飛行に弱い
4. 打ち消しを構えているだけでは勝利できない
ー 生物を含む、着地したパーマネントに弱い
この問題は、青単デルバーというより「青単」の根本的な問題です。打ち消しにより何にでも対応できる反面、一度着地したパーマネントに対処する方法は、《はらわた撃ち》《水流破》といった超局所的なものを除き、原則としてバウンスのみです。
青単デルバーで採用されるバウンスはテンポ損のない《断絶》かダメージのおまけがある《蒸気の絡みつき》程度で、いずれもクリーチャーのみです(クリーチャー以外への耐性を持つために《残響する真実》をサイドに持つケースはあります)。
また、言うまでもなくバウンスはカードアドバンテージを失うばかりか、打ち消しを併用しない限り根本解決にはなりません。バウンスと打ち消しという、ある意味コンボでしか対応できないということです。厳しいと言わざるを得ません。
さらに困ったことに、着地されると致命的なパーマネントは少なくありません。代表的なものは、
- 《熱錬金術師》…固定砲台になるばかりか、呪文が打ち消しても1点ダメージに
- 《散弾の射手》…1ターン目でSSSが機能停止
- 《クォムバッチの魔女》…フェアリー撃ち落とし大会開催
- 《黒死病》…ライフを詰めていない状態で着地されると厳しい
などです。《黒死病》はともかく軽いカードは対処する間もなく着地するため、パーマネントの対処に手こずっている間に勝敗が決してしまうことも少なくありません。
また、ストンピィとの相性の悪さを決定づけた《炎樹族の使者》もこの弱点を突いています。
2ターン目で2/2を複数展開され盤面を厚くするこのカードは、状態の良い形で撃たれるだけで勝敗が決定的になってしまいます(歴史的には、《炎樹族の使者》に対応するために、青単デルバーから青赤デルバーが派生しました)。

ー2/2以上の飛行に弱い
フェアリーは1/1、デルバーでさえ3/2というサイズ感なので、2/2以上の飛行に弱いです。
この弱点こそが、《噴出》《目くらまし》の禁止以上に、青単デルバーが環境から放逐された最大の理由と考えています。
《アーカムの天測儀》の隆盛に合わせて、《コーの空漁師》および《きらめく鷹》の使用率が高くなり、それらとシナジーのある《儚い存在》《熟考漂い》の使用率が増加しました。これら《コーの空漁師》《きらめく鷹》《熟考漂い》は、青単デルバーにとって、実のところ《紅蓮破》より苦手なカードです。
《紅蓮破》は基本的には1対1交換にしかならないのに対し、これらはカードアドバンテージを失わないばかりか、サイズ感でこちらのクロックを止めたりリソースを奪ったりします。
青単デルバーは典型的なフェアデッキであり、アドバンテージにはかなりシビアです。《コーの空漁師》《きらめく鷹》《熟考漂い》は1枚で2枚以上の仕事をされるのでかなりキツいカードです。
それ以外のこの弱点をつくカードとして、《嵐縛りの霊》が真っ先に上がります(ミラーマッチで有効ですね)。それ以外には、《縫い合わせのドレイク》《隠れたる蜘蛛》あたりでしょうか。
青単デルバーを相手にする際は、これらのカードを通すことを心掛けると良いと思います。ただし《変異原性の成長》は基本的にデッキに入っているものとして対処してください(尤も、挙げたカードは通った時点で仕事をしているので、大きな痛手にはなりません)。
また、《潮流のマントル》の登場により、2/2への対処手段が増えたことは特筆に値します。とはいえ、素のタフネスは変わっていないため、「多少マシ」になった程度で、依然として2/2以上の飛行に弱いという点は解決されていないと考えています。