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ジェスカイ氷雪というアーキタイプについて


 

  • はじめに


    ―――氷河期は去ったが、その遺物は今でも新アルカイヴで眠っている。

 

 2019/05/20の《ギタクシア派の調査》《噴出》《目くらまし》の禁止以来、Pauperのメタゲームは激変し、それまで一強体制だった青黒デルバーはその姿を消しました。

 青黒デルバー(と巻き添えを食らった数々のデッキ)の衰退と反比例してその勢力と伸ばしたのが、現環境でも猛威を振るっているウルザトロン(リストは最新)です。禁止改訂以前は青いテンポデッキによりそのポテンシャルは押さえつけられていましたが、デルバー無きメタゲームにおいてこのウルザトロンを倒せるデッキはそう多くはありませんでした。


 

 しかしながら、史上初となるスタンダードを経由しない新セットの『モダンホライゾン』が発売します。ここで登場した《蘇る死滅都市、ホガーク》《否定の力》といったカードの活躍は記憶に新しいと思いますし、このセットの与える影響は発売時にはおよそ計り知れないものでした。それはPauperも例外ではありません。
 

《アーカムの天測儀》の登場は、Pauperの根本的な問題であるマナベースを大幅に改善する画期的なものであり、実際に環境の多色化を推進させました。また、《儚い存在》により今まで《幽霊のゆらめき》と(《記憶の壁》or《古術師》)×2が行っていた墓地の呪文を回収する動きが1枚で行えるようになり、フリッカートロンや青黒フリッカー等のデッキのアイデンティティを奪ってしまいました。他にも『モダンホライゾン』には《凶暴な一振り》《嵐の乗り切り》といった、Pauper環境に絶大な影響を及ぼすカードが数々収録されています。

 この『モダンホライゾン』の波により、発売初週からウルザトロンのデッキは数を抑えられてしまいます。環境はウルザトロンと他のデッキという明確な対立構造が生まれ、「トロンに勝てないデッキはデッキではない――――」という言葉まで生まれたそうです。(多分嘘です)

 超高速の攻撃を仕掛けトロンが成立する前に殴り倒す緑単ストンピィや赤単バーン、白単英雄的、ボーグルズといったアグロデッキと、その攻撃をいなしながらトロンを揃えて膨大なマナから《幽霊のゆらめき》を連打するトロンデッキ・・・お察しのいい方はもうお気づきかと思いますが、前述したこの2つのデッキどちらにも勝ちたい!という欲張りな人達が頑張って開発したデッキが今回紹介する氷雪コントロールになります。

しかしながら・・・




 

2019/10/21の緊急で行われた禁止改訂により、パウパーにおいて
《アーカムの天測儀》が禁止されることになりました。

 

公式発表(英文)のざっくりとした要約(意訳)ですが・・・

  1. これまで多色化に関して大きな課題を抱えていたパウパーが3色以上を安定させることに成功、尚且つ平均勝率55%以上のTier1デッキを生み出してしまったこと(ボロスキティについても言及)はパウパーというフォーマットに多大な影響を与えている。

  2. ETB能力(戦場に出た時の効果)を持つクリーチャーの中でも、《アーカムの天測儀》を繰り返し利用することのできる《コーの空漁師》《きらめく鷹》《儚い存在》と組み合わせることで1マナのカードがアドバンテージ源になるのはバランスを壊している。
     

 という大きく分けて2つの理由によって禁止が決定しました。禁止直前の大会ではシェア率90%近かったので、残念ながら当然の結果だと思います。

 

 私事で恐縮ですが、《目くらまし》《噴出》の禁止により青黒デルバーが使えなくなった後から暫く握り続けていたジェスカイ氷雪コントロールは消滅、10/27に行われる予定だったpauparMCQに向けて更なる調整を行っていただけに残念ではあります・・・

 禁止改訂後、SEIGAさんと話し合い、「一世を風靡したデッキなので」ということで、今後のパウパー界に何か貢献できればとの気持ちで執筆したいと思います。もう存在しないデッキとはいえ、読者の方に何か学びがあれば幸いです。

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アーカムの天測儀を一番強く使ったデッキ。

  • おおまかな動き

 

 ジェスカイ氷雪コントロールは赤白青の3色(場合により4色)で組まれる、《儚い存在》《熟考漂い》のコンボを中心としてアドバンテージを失わないクリーチャーと除去によって構成されるデッキです。

序盤は《定業》《アーカムの天測儀》で手札を整えつつ土地を並べ、盤面を《稲妻》《雪崩し》の1対1交換を行う除去で処理していきます。


 

 このデッキは相手のクロックを止めることとカードアドバンテージを得続けることに長けており、パウパーの標準的なクリーチャーサイズである2/2は《コーの空漁師》が受け止めつつ、複数体並ぶor除去で相手のクロックを捌くことが出来れば自身が安定した飛行クロックとして先行後攻を反転させるようになります。 《コーの空漁師》自体は自身のETB能力で“ETB能力によってカード枚数を+1するパーマネント”を戻すことさえできればアドバンテージを失っていない為、カードアドバンテージの側面で捉えた場合相手の-1の挙動がこちらに±0の影響を及ぼしていることになります

 これは《コーの空漁師》《アーカムの天測儀》の組み合わせが最も知られるところですが、他のパーマネント(各種後述)によっては更なるアドバンテージを獲得し、状況によっては《コーの空漁師》を出しているだけでゲームの勝利へ近付くことが出来ます。
 

 サンプルレシピは6/9時点のものなので古いですが、大枠が変わることはどのレシピにもありません。

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  • ミラーマッチについて

     

 基本、このデッキ(パウパーのカードプールの中という枠組みでも構いませんが)の個々のカードのシナジーは《儚い存在》が絡まなければ爆発的なものではなく、細かな+1の動きを辛抱強く繰り返し続けなければなりません。
 特に、ミラーマッチでは《儚い存在》《熟考漂い》のコンボによるアドバンテージが不利盤面を一気に押し返す程の力を持っているので、寝かせるべきマナに対しての確実なリスク計算を求められ続けます。




 

 《粗石の魔道士》はその点でミラーマッチにおいて確実に+1以上の動きを単体で成すことが出来る+メインボードにおいてはカウンターの枚数が限られているため、相手の《アーカムの天測儀》が存在せず、且つ、色事故を起こしている場合orテンポ面での勝利が確約されている場合以外でのカウンターを無視して安全にパーマネントを展開できる点で非常に優れています。
 以前は《アーカムの天測儀》を持ってくることが最も強力とされてきていましたが、『エルドレインの王権』以後は《魔法の井戸》をサーチすることにより、睨み合いになることを見越して更なるカードを求めることも選択肢として構築段階から検討することが可能になりました。
 メインデッキにおける先手の3ターン目は多くの場合積極的にキャストしますが、サイド後の後手3ターン目のキャストは、相手の《粗石の魔道士》の動きの返しにキャストすること以外に明確なdo or notの線引きをすることが出来ません。詳しくは後述します。


 



 

 ミラーマッチだけに留まらず、このデッキにおけるいわゆる“ぶん回り”は

 1ターン目の《天測儀》から《コーの空漁師》を展開することであり、
決して4ターン目に《儚い存在》《熟考漂い》のコンボを決めることではありません。

 それを加味して考察するに、自分の《粗石の魔道士》《コーの空漁師》等のクロックのキャストは、相手に《コーの空漁師》を展開されていて自分が除去を握れていない時に限っては積極的であるべきです。
(自分が除去を握れていないのであれば、相手から除去が飛んでこないことを願いながらクロックをキャストしてダメージレースを仕掛けるか、もし握っているクロックが《コーの空漁師》であれば除去をいかにも持っているかのようにそれをキャストしましょう、多くの場合相手の《コーの空漁師》に除去を打てないことはゲームの敗北を意味します)



 ジェスカイミラーにおけるゲームの煩雑さは、

長期戦になるほど手札が透けやすい⇒それにも関わらずカウンター合戦が終わった後の返す刀が《熟考漂い》を筆頭にマストカウンターのスペルが多く、自らスペルをキャストすることが難しい点にあります。

 その為比較的早いターンにクロックを定着させることは、大きな動きの睨み合い以外での戦いを相手に強いることが出来る為、積極的でなければならないのです。
 つまり《アーカムの天測儀》禁止直前のレシピに除去が多く搭載されているのは、ジェスカイミラーを制する為の「ハンドアドバンテージ以外のイニシアチブ」を相手に握らせない為だと推察できます
(当然、ストンピィへの殺意はあると思います)。ミラーマッチにおいて除去はカウンターとほぼ同レベルの重要性を持ちます。

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 相手のライフを詰め切れる程度のクロックが用意できていれば話は別ですが、積極的な除去は多くの場合《儚い存在》《熟考漂い》への警戒を解くことに直結しています。目先の脅威に囚われず、大局観を持つことが大事です。

 《炎の稲妻》を採用するレシピが散見されますが、《コーの空漁師》をキャッチした《コーの空漁師》を後腐れなく処理できたり、あまり通常の除去を使いたくない《粗石の魔道士》を倒すことができるのはミラーマッチにおける構築段階のアドバンテージととらえることも出来ると思います(しかしながらフラッシュバックのコストがかなり大きいのも課題で、墓地に存在することで相手の選択肢を狭めるカードとしての役割が大きいと思います)。


 私のサンプルレシピにおいては、お互いの盤面にクリーチャーが定着した後を考えて《レオニンの円月刀》を採用していました。《コーの空漁師》に装備することが理想ですが、もはや盤面にいるだけの《呪文づまりのスプライト》や、《コーの空漁師》の前では無力になってしまう《きらめく鷹》《粗石の魔道士》らの2/2に装備させつつそれらが単騎で殴ることで除去を強いる点と、3/3以上のボディは通常のジェスカイが用いるクリーチャーでは越えられない《コーの空漁師》に限っては《稲妻》すら当たりません)ことから、テンポ面も膠着盤面も強くなるカードとして非常に優秀だと考えていました。

 現在では《赤霊破》の影響を受けないことを除いて《潮流のマントル》がその後継を担っていますが、発表段階でかなり騒がれたのに反して禁止直前まで《潮流のマントル》入りジェスカイが日の目を浴びることはありませんでした(強いのは間違いないです、たぶん)。

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また、ミラーマッチが難しくなるのはメインボード以上にサイドボード後になると私は考えられます。それは赤霊破》《青霊破》《軍旗の旗手》《電謀》といったカードすべてに採用する余地がある為考えるべきカードが多いということに加え、テンポの取り合いという側面が顕著にでる為です。前者に関しては後述します。
 

 サイド後はテンポの取り合いになるという話ですが、テンポを取って勝つことが最も勝ちやすく、勝ち筋が明確です。この場合、《青霊破》をサイドインすることによって相手の除去を的確にカウンターし、自分のクロックを残し続けながら《赤霊破》で睨みをきかせることをテンポ、と表現することとします。《儚い存在》はサイドアウトしがちですが、自分のクロックを守るための《払拭》+αの働きが出来る為、テンポを重視するサイドボーディングを行う場合はサイドアウトしません。

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 テンポを取りながら戦う場合、《軍旗の旗手》はクロックを除去から守る手段として非常に有効です。また、自分の《儚い存在》《熟考漂い》コンボに対する除去での妨害を無視するのにも一役買います。

 ですが《軍旗の旗手》自体は1/1と全く頼りないサイズであるにもかかわらず2マナのクリーチャーであり、除去から守る為に出す《旗手》が逆にテンポを悪くしている、という自己矛盾が発生してしまうのは気にするべき点です(先出しはあまりにも弱いです)。

 サイド後はメイン戦よりもお互いの1:1交換をするカードが増える為自分のスペルでアドバンテージを稼ぎづらくなります。それ故メインボード以上にいかにして相手の+1を阻害し、相手の阻害を自分にとっての±0にするかがキーになります。
通すしかないけどアドバンテージを稼がせてしまう
カードが有用になる、という話です。

 先述した《粗石の魔道士》問題をここで再提起しますが、確かに《粗石の魔道士》はそれ自体をカウンターすることは憚られ、相手からしても通したく、自分もキャストしたいのですが、サイドボード後は
《赤霊破》によって一瞬でテンポを奪われてしまう為後手時に赤が1マナでも構えられている場合はほとんどの場合打ちません。
 

  1. 《熟考漂い》と少なくとも1枚の《赤霊破》を握っている。

⇒後手5ターン目に向けて、先手5ターン目の相手の行動に1マナカウンターの応酬をすることを見越し相手のカウンターを消費させたい。

  1. 《アーカムの天測儀》が無く、《コーの空漁師》を握っている。

⇒事故緩和。「撃たないと勝てない」状況のひとつ。

  1. 相手のクロックが存在せず、こちらに《コーの空漁師》が着地している。

⇒更なるクロックの定着によって《コーの空漁師》を間接的に保護するような形でブン回り続けたいです。ただ相手の《粗石の魔道士》の着地を許してしまう可能性が十二分にあり得るので、少なくとも1枚以上の除去を握っている状況下でキャストしたいです。《粗石の魔道士》《コーの空漁師》はライフレースができてしまうので。
 

以上の3つのケースにおいては、後手時でもリスクを背負ってキャストしても構わないと私は考えています(異論、ご意見、お待ちしております)。

 

 しかしながら、先述した通りサイドボード後は1:1交換をするカードが非常に増える為、先に《儚い存在》《熟考漂い》コンボを決めたプレイヤーが自動的に勝利すると言っても過言ではありません。
 5ターン目以降は3マナのスペルをキャストすることにリスクが伴い続ける為、クロックのせめぎ合いに気を取られず、カウンターをしっかりと複数枚引き込んでいる時以外はクロックも除去も構え続けたいです。

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 そして《電謀》ですが、相手の《呪文づまりのスプライト》《軍旗の旗手》を1枚で対応できることに加え、自軍の《コーの空漁師》の攻撃を適当にキャッチしてきた相手の《コーの空漁師》を倒すことが出来るため、盤面のイニシアチブを考慮するのであればサイドインに関して一考の余地があります。

 

 また、サイドボード後の《呪文づまりのスプライト》は1マナのスペルが飛び交う中で有効であるように思われますが、逆に1マナのスペルが飛び交っているからこそそこまで有効に働くことが出来ないのではないか、と考えています。

 ジェスカイミラーに限らず、このゲームは軽いカードで重いカードを対処する動きはテンポ面で非常に強力です。フェアリーカウントが無い場合がほとんどになりますが、1マナのスペルを弾く為に“2マナ必要で除去でも阻害されるカウンター”は安定性に欠けます。2マナ以上をカウンターするべく先に相手のエンド時に置いて殴るにしてもクロックとして不十分であり、その場合は相手の《コーの空漁師》の残り枚数、自分の手札の除去の枚数、相手の既に透けているスペルと相談しながらキャストしましょう。多くの場合エンド時における予めのキャストは行いません。
 

 先手/後手の差があまりにも激しいこともサイドボード後の採用を躊躇わせています。
後手の場合相手の1マナアクションに対する回答としてはほとんど間に合っておらず、先手で出された《コーの空漁師》に対してあまりにも無力です。どうしても相手のテンポを奪うという側面が強いカードなので、選択肢がそもそも先手の場合にのみメインボードに残す可能性があると言えます。

 

 しかしながら、ミラーマッチにおける《呪文づまりのスプライト》は世間体で言われるよりも強力な動きをすることがあります。

  1. 相手の《定業》《思案》《渦巻く知識》を、リスクを取らずにカウンター出来る。
     

 ⇒ジェスカイ氷雪における平均的な土地の枚数は19枚であり、ナチュラルに引ける土地の枚数は約4枚、多くのミラーマッチでターニングポイントとなる5ターン目に土地を置ける確率は・・・まさかの先手で29.2%、後手で39.0%です(参照:https://www.mtg-card.jp/entry/lands)。マナフラ率は2.8%・・・
 

 Channel FireballのFrank Karsten氏はデッキに必要な土地の枚数を求める計算式として

[Lands=3.14*(avg CMC)+16.0] ※avg CMCとはデッキ内の土地以外のカードのマナコストの総和を土地以外のカードで割った数、だそう

を提示しましたが、これに基づくと5マナまではしっかり溜めたいジェスカイに必要な土地の枚数は27枚(5ターン目に土地を置ける確率が65.3%)になります。
 

 ここからは感覚的な話ですが、確かに《定業》《渦巻く知識》で土地を探す場面は相当数にありますし、不安定なマナベースを各種1マナドローで補完している部分は否めません。
 相手の事故を誘発させる、という意味合いで《呪文づまりのスプライト》によるドロースペルをカウンターする動きは非常に強力だと言えます。

 

 捕捉になりますが、メインサイド問わずミラーマッチは土地を置き続けることが手札を透かさない為に有効で、自らが膠着盤面を打開する時でも5マナでの《熟考漂い》のキャストをカウンターによるバックアップ込みでアクションしやすくなる他、+1の先の動きをするためにも土地はいくらでも置きたいです。籠城する時に何枚でも欲しいのは言うまでもないですね。

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2.《対抗呪文》を使わずに相手のスペルをカウンターできる可能性がある。

⇒青マナが2つ起きている状況の多くに対戦相手は《対抗呪文》を連想しますが、《呪文づまりのスプライト》は同じマナコスト域でほとんど同じ動きをする為、自分が仮に《対抗呪文》を持っていない場面でもあたかも持っているかのように振舞うことが出来ます。

 後述しますが、《アーカムの天測儀》は是非ともカウンターしたいスペルであるにも関わらず《対抗呪文》を使うことに関しては後のゲーム展開に支障をきたす場合があるので、2体目以降のバリューを高める為にも《呪文づまりのスプライト》でカウンターしたいところです。

3.相手の除去を消費させることが出来る。
 

 ⇒先述しましたが、ジェスカイミラーにおける有効な勝ち筋の一つは序盤に定着させたクロックでそのまま殴り切ることです。クロックに対する《稲妻》《雪崩し》《呪文づまりのスプライト》でカウンターすることは非常に有効であり、この場面に留まらず《呪文づまりのスプライト》のETBに対応した相手の除去はクロックをさらに定着させてくれます。
 除去の消費は《儚い存在》《熟考漂い》を阻止する手段を少なくすることと同義であり、2つの勝ち方を促進させる動きに繋がっています。

4.[一番のキモ]《アーカムの天測儀》をカウンターすることが出来る。
 

 ⇒ジェスカイ氷雪の土地基盤の脆弱性は①で説明した通りですが、サイドボード後においてリスクを少なくして《アーカムの天測儀》をカウンター出来ることの強さはゲームを決定するほどのものです。
 一般的なジェスカイ氷雪の赤マナは《冠雪の山》2枚のみであり、サイドボード後に
《赤霊破》《紅蓮破》、時に《電謀》等、赤マナを要求するスペルが非常に多くサイドインされる為メインボード以上に《アーカムの天測儀》に対する依存度は高くなっています。

 
何度も記述しますが、ジェスカイ氷雪の基本的な動きは「溜め」であって、《呪文づまりのスプライト》による《アーカムの天測儀》へのカウンターは相手の撃てる
《赤霊破》《稲妻》等を制限することに繋がり、後のカウンター合戦における優位性を確立できます。仮に《赤霊破》《稲妻》によって阻害されることがあっても、③で述べたように他の勝ち方を促進させる結果をもたらしてくれます。

 豆知識ですが、《アーカムの天測儀》をカウンターする《呪文づまりのスプライト》
《赤霊破》でカウンターしてくる相手は、二枚目以降の《赤霊破》を持っている可能性が高いです。紙媒体でプレイしている場合は相手の挙動からも大きなヒントを得られるので、この局面は相手の一挙一投足に目を向けましょう。

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 ミラーにおける《熟考漂い》の難しさですが、多くの場合3マナでの想起キャストに関して悩む必要はなく、通してしまっていいと思います。
 よく考えてみれば想起の《熟考漂い》《予言》であり、そこに下手にカウンターを合わせようとして返り討ちに遭うと相手の《儚い存在》が通ってしまい順当にアドバンテージの差を広げられてしまいます。
 通常の想起キャストは盤面に何の影響も及ぼしませんし、ソーサリータイミングで盤面に干渉することのない3マナを使うことは経過ターン数によりますがリスクと取ることも出来ます。この想起を通して相手がスタックで《儚い存在》を撃ってきた場合はカウンターをいくらでも撃ちますが、もし《儚い存在》がない場合は双方何もしませんし、相手はこちらのリアクション次第で《儚い存在》を撃つことを諦めるでしょう。《熟考漂い》はあくまで最強の返す刀であり、想起であれ自らキャストすることはかなりのリスクを背負うということを念頭に入れておきましょう。

 

 今一度反復しますが、ジェスカイミラーは牽制しあう中で定着したクロックが殴り続けた結果いつのまにか勝負が決しているようなゲーム展開がほとんどです。

 ヴィンテージで《ファイレクシアの破棄者》が10ターン殴るのと同じ現象でしょうか。そんな膠着盤面は続くからこそ相手の適当な《定業》に合わせる《呪文づまりのスプライト》は強力に働くことがあって、クロックとテンポの双方を補給してくれる、故に採用されるリストは増えていると考えています。クロックを先に定着させた方がライフアドバンテージ的にも優位に立てますし、相手の除去札に《呪文づまりのスプライト》を合わせることが出来れば相手は泡を吹いて倒れるでしょう。

 踏まえて考察するに除去はジェスカイミラーを決する重要なキーパーツであるといえますし、それ故に除去を使う場面はゲームプランからある程度方針を固めておきたいです。ジェスカイミラーにおける除去は概ね-1のカードなので、除去を乱れ撃ちしてもアドバンテージ勝負の末敗北してしまいます。《粗石の魔道士》《粗石の魔道士》のブロックで倒すことが一番楽です。除去は《コーの空漁師》《儚い存在》の対象となっている《熟考漂い》、場合によっては《きらめく鷹》に撃つことがミラーで差をつける使い方になると思います。他は感覚的な話になってしまいます・・・

 

 相手の《呪文づまりのスプライト》を倒すための除去は必要である盤面も存在しますが、そもそも《呪文づまりのスプライト》を撃たれている状況は後手に回っているという事実を鑑みながらプレイすることを心掛けましょう。

 

 サイドボード後は先手をとるべきか否か、という話ですが、一時期積極的に後手を取るようにプレイしていた結果あんまり勝率が芳しくなく、「目先の1ドローに囚われすぎている、テンポを気にしてプレイしろよ下手糞」という友人の温かい助言により、後手を取れという発言は撤回しました。
 先述している通りこのミラーマッチはクロックを如何に残しつつ膠着盤面を作り上げるかに要点が絞られる上、総じて先手がゲームを作りやすいことは自明の理である故に先手は積極的に取る、と結論付けられます。よく考えてみれば後手の1ドローは《アーカムの天測儀》一発でひっくり返るんですよね。

 

 

 ミラーマッチにおける気を付けるべきポイントは概ね出しましたが、何か足りないところがあれば是非ご指摘下さい。私の範疇でお答えいたします。

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■ 他デッキへの立ち回り(不利デッキのみ)

 

◎ 対 緑単ストンピィ

[メインボード:4・6不利 ⇒ サイドボード後:5・5]
 

メインボードの明確な勝ち筋として、除去を確実に相手のオーラ、《吠え群れの飢え》《凶暴な一振り》を対象不適正にさせるべく温存しながら、自分の《コーの空漁師》を複数体並べることが挙げられます。こちらのブン回り(2ターン目の《コーの空漁師》)で相手のクロックを抑えつけることは出来ますが、《凶暴な一振り》《怨恨》《巨森の蔦》《吠え群れの飢え》《象の導き》で悠々と越えられてしまう為、基本お祈りしながらのプレイになります。

 このマッチアップにおいて除去を撃つタイミングは相当難しく、《巨森の蔦》《吠え群れの飢え》を常に意識内に入れておかなければなりません。時には相手のオーラの対象不適正を狙わずに相手のフルタップに合わせてこちらのメインフェイズに除去を撃つことも視野に入れます。動いているゲームスピードが根本から全く違うので、適当に除去を撃ったことで他の生物に《吠え群れの飢え》を有効に撃たれた日には相手よりも早いスピードで土地畳みアグロを仕掛けましょう(ちゃんとケアしましょうの戒め)。

 

 《儚い存在》をアグレッシブに撃つことが出来ないのもジェスカイの強みを削がれているな、と感じる要因の一つです。ほとんど《払拭》と同様の使い方しか出来ないので、後手に動くことを強いられてしまいます。時には《濃霧》のように働くこともありますが、《濃霧》として撃つ時が一番弱いので、ほとんどやることはありません。

 また、ストンピィ側には対ジェスカイ最強生物の《リバー・ボア》が存在しているため、対応策を用意していないレシピだとカウンターを是が非でも当てないと着地した瞬間に右クリックからのconcede gameを押すハメになってしまいます。ケアすることが多すぎないか?

 

 処理すべきクリーチャーの優先順位として、

《スカルガンの穴潜み》>各種パワー2生物>《大霊堂のスカージ》《クウィーリオン・レインジャー》

を示します(《シラナの岩礁渡り》《リバー・ボア》は最優先で処理しますが、概ね処理できないので含めていません)。
 《スカルガンの穴潜み》はチャンプブロックが出来ない故にチャンプブロックによるライフ管理すら許容されない為優先的に処理します。《大霊堂のスカージ》は飛んでいるだけなので基本他のクリーチャーから処理していきます。相手の事故を促進させるのであれば《クウィーリオン・レインジャー》を倒しますが、ほとんどの場合無視します。

 

 サイド後に関しては《痕跡消し》《軍旗の旗手》《払拭》が相手のゲームスピードを下げることに一役買ってくれるので、(相手が《炎樹族の使者》を絡めながらアクセルを踏んでこない限り)概ね5分で戦えるかな、と感じています。《軍旗の旗手》でストンピィ側のほぼすべての強化呪文とオーラを無効化できるので、守りながら《コーの空漁師》《きらめく鷹》で早々に殴りましょう。

 《電謀》はサイドンインするかかなり怪しいカードです。相手の《クウィーリオン・レインジャー》《大霊堂のスカージ》には確かに有効ですが、相手のタフネスラインが2であることに加え、オーラや《吠え群れの飢え》によるパンプ後はこちらのブロック+《電謀》でクリーチャーを対処することができないほどにタフネスが引きあがる為、入れるものがなかったら入れる、くらいの認識に留まっています。2枚重ね引きすることを前提として《紅蓮地獄》を狙うようにすれば有効牌と扱うことも出来ます。

 

 メイン戦サイド戦両方に言えることですが、《呪文づまりのスプライト》はこのマッチアップを克服するためのキーカードになり得ます。自身がそのままゲームを決める為のクロックになりながら相手のクリティカルな各種1マナスペルを打ち消せることに加え、《コーの空漁師》で回収可能なので次のスペルを打ち消しつつブロッカーを立てられます。この動きは対ストンピィ戦で積極的に狙っていきたい動きなので、常に可能性を頭に入れながら動きたいです。
 

 《アーカムの天測儀》禁止の数日前に投稿されたChannel Fireballのジェスカイ氷雪に関する記事は、《稲妻》《雪崩し》各4枚に加え、《火葬》を2枚採用しており、かなりストンピィを意識しているとの印象を受けます(https://www.channelfireball.com/all-strategy/articles/a-guide-to-jeskai-snow-in-pauper/)。

もし本当に憎いのであれば《緑の防御円》を入れましょう。

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◎ 対 呪禁オーラ

[メインボード:2・8不利(勝てない?) サイド後:7:3有利]

 

 メインボードは相手がクリーチャーとフィルターを多量に引いて、尚且つ《祖先の仮面》《アルマジロの外套》を中心にオーラを引いてくれれば勝つこともできます。概ね緑単ストンピィと同じでこちらは土地畳みアグロを仕掛ける側です。天文学的数字でメインボードは勝てますが、期待はしないほうがよいでしょう。
 

 このデッキとはサイドボード後から本当の戦いが始まります。
《痕跡消し》《軍旗の旗手》《電謀》を無限に探し続けましょう。撃つと勝ちます。《痕跡消し》は何回でも撃ちたいので、私は《古術師》をサイドボーディング過程で抜きません。《電謀》は相手のオーラの対象不適正を狙いましょう。
 また、相手が《払拭》《はらわた撃ち》をサイドインしてくるのはほぼ確実なので、こちらも《払拭》、場合によっては
《赤霊破》《紅蓮破》も入れましょう。とにかく《痕跡消し》《軍旗の旗手》《電謀》を通すことに全力を注ぎましょう。
 

 また、《アーカムの天測儀》禁止前の呪禁オーラは《コーの空漁師》にオーラを付けるサブプランが存在していた為、《稲妻》《雪崩し》を抜き切ることはしません。

これ以上何か書くことありましたっけ?

◎ 対 トロン(氷雪トロン含む)

[メインボード:4:6不利 サイド後:5分~有利](プレイングによる個人差アリ)

 

 癌です。
コントロール同士のマッチアップはどちらがより行動回数を増やせるか=アドバンテージを稼ぎ続けるか)の戦いになりますが、向こうに圧倒的な軍配が上がります。

 トロンというアーキタイプの構造上、自身のコンボの安定性を上げるカードを大量に入れる必要があり、伴ってカウンターや除去は必要最低限しか入りません。除去に関しては戦闘ダメージを0にすることで間接的に盤面のクリーチャーを触らずして除去することを選択している為、人によって《破滅の刃》を1枚入れている程度の採用率です。よって《儚い存在》《熟考漂い》を決め続けることは可能ですし、そのアドバンテージを相手のコンボパーツに的確に当てることさえできれば相手の《一瞬の平和》《石角の高官》がなくなるのを待つだけのゲーム展開にすることもできます。
 コンボデッキでありながらコントロールのような挙動も可能でありキャントリップやドロースペルの多さから相手の手札がかなり透けにくいので、ある程度展開から予測されるマストカウンターを決めながらプレイすることが求められます。

 

 

1.1ターン目に《探検の地図》《アーカムの天測儀》を置かなかった。

《呪文づまりのスプライト》で牽制し続けます。《コーの空漁師》《きらめく鷹》をキャストしたくなってもキャストは2マナを構えられる時にしましょう。揃う前に勝つ、というよりは、揃っても勝てるほどの脅威にさせるべく序盤からアクションを制限させていきたいです。
 

 

2.2ターン目に《予言のプリズム》を置かなかった。

《呪文づまりのスプライト》《対抗呪文》の優先順位で《予言のプリズム》《アーカムの天測儀》をカウンターするべく構えます。詳細は後述しますが、対トロンは相手の行動回数を如何様にして減らすかが勝敗のカギとなります。故にフィルターを置かれないのであれば①と同様にクロックの展開を遅らせても警戒し続けたいです。
 

 

3.フィルターが1枚でトロンが成立した。

《予言のプリズム》《アーカムの天測儀》《記憶の壁》《ムラーサの胎動》or《儚い存在》の優先順位で、②と同様のカウンターの優先順位のままカウンターします。フィルターを打ち消すのは前述した通りですが、フィルター1枚だと青いコンボパーツ+αの動きが可能であり、その状態での最上級の脅威が《記憶の壁》《ムラーサの胎動》の半無限ライフコンボ、及び《記憶の壁》《儚い存在》の呪文無限回収コンボです。
 一度ハマってしまうと後続のコンボパーツへと繋げる時間稼ぎが出来てしまい、また《記憶の壁》自体がコンボパーツなので、《儚い存在》+αを絡め始める余裕が相手に出来てしまうのがゲーム展開的には芳しくないです。除去+カウンターでどちらも対処したいです。

 

 

4.特にトロンも揃う気配がないが、相手のフィルターは充実しており、《石角の高官》《一瞬の平和》で時間稼ぎをされている。

 ⇒《探検の地図》{&《儚い存在》《石角の高官》着地時)}>《記憶の壁》《幽霊のゆらめき》の優先順位でカウンターします。《石角の高官》《一瞬の平和》は時間稼ぎこそするものの、それ以上のことをしません。《儚い存在》《幽霊のゆらめき》で何ターン飛ぶか分からないという状況下においては後者をカウンターしますが、前者をカウンターすることはほとんどありません(次のターンで殴り切れる時に相手の手札が約2枚で撃ってきた時など相当な限定状況でしかカウンターすることはありません、むしろその状況でも概ね打ち消さないかもしれない)。
 フィルターが2枚以上ある状態でトロンが揃ってしまうと1ターンに複数体の脅威を出すことも可能な為相手のトップに依存させるべく《探検の地図》はしっかりカウンターしていきたいです。《記憶の壁》については先述していますが、フィルターが豊富な状況で《ムラーサの胎動》《儚い存在》《幽霊のゆらめき》が絡むとターンを追うごとに負けが濃厚になってしまうため絶対に着地を許してはいけません。フルタップで出してきたのであればETB能力のスタックで除去しましょう。

 


 

 まだまだあるとは思いますが、私が列挙できるのはここまでです。

ジェスカイミラーと同様に相手の《熟考漂い》の想起は概ねカウンターしない、相手の《記憶の壁》《古術師》)の扱い、等かなりジェスカイミラーと似たり寄ったりの部分が散見され、それと同様の難しさがあるかな、と感じます。ほとんど不利になってしまいますが、プレイヤーのスキルや噛み合いによっては全く勝てないという訳ではなく、むしろ様々な分岐点が存在する為それらのリスクを管理すれば理論的には十二分に勝てるマッチアップだと考えています。よって《ウルザの塔》は禁止されます。(私はトロンに勝った記憶がそんなにありません)

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 ◆サイドボーディング
 

この記事においては正確に「何を何枚入れて、何を何枚抜く」ということは明文化せず(リストによってサイドボーディングの枚数は全く異なり、私のサンプルレシピは古いためサイドボーディングのミクロな部分を明らかにすることは様々な矛盾を孕んでしまいそう)、一般的にジェスカイのサイドボードで採用されているカードを「何故採用されうるのか」という視点で述べていきます。
 

 

《赤霊破》《紅蓮破》

⇒最強の色対策カード。青い相手ならほとんど投入します。

 《赤霊破》《紅蓮破》の差異は「空撃ちできるか否か」という点に集約されており、「相手の盤面に既に《軍旗の旗手》が存在している時に相手の青いパーマネントを破壊したい」のであれば《赤霊破》 を、「スレッショルドの達成を自発的に行いたい」「《道の探究者》の果敢を誘発させたい」のであれば《紅蓮破》を使いましょう。相手の盤面に《軍旗の旗手》がいる時に《紅蓮破》をパーマネントモードでキャストしてはいけません。

 また、カウンター合戦の終着点の多くが《赤霊破》であり、相手が不用意に《払拭》でカウンター合戦に参加してきた場合はしっかり《赤霊破》で終わらせましょう。相手の《赤霊破》に対する最強の回答は《赤霊破》です。

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《青霊破》《水流破》

⇒最強の色対策カード。赤い相手ならほとんど投入します。

 ですが、氷雪の晩年(?)にはサイドボードに搭載しないレシピも散見されるようになりました。

 私もそのうちの一人だったのですが、《青霊破》「相手の《赤霊破》《稲妻》を弾く」というケースでサイドインされることが多く、相当テンポを重視したサイドボーディングになってしまう故にいわゆる“ご都合”を求めているなと感じての降板でした。

 しかしながら長々と述べた通りミラーマッチでの除去や
《赤霊破》の重要性は特筆に値するので、《青霊破》を完全に抜き切るというのもまた考察のしがいがあると思います(私は感覚的に抜いてしまったのでその域に達していません)。
 バーンやゴブリン相手はメインから入っている《呪文づまりのスプライト》を回して充分に勝ち得るので、対赤への勝率に関してほとんど影響はありませんでした。

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《電謀》《渦巻く砂嵐》

 ⇒先述したミラーマッチでの用途以外対エルフ、オーラへのカードです。

後者に限っては親和に対しても有効ですが、ジェスカイ氷雪は墓地の溜まる速度がそこまで早くない為スレッショルドが間に合わない可能性は十分あり得ます。

 対フェアリーですが、《コーの空漁師》《きらめく鷹》が存在している時点で相当に有利である為、わざわざサイドインするのか?と疑問ではあるところです。

《痕跡消し》《貴族階級の嘲笑》

 ⇒対オーラ、ジェスカイをメタってきたペストへのカードです。

基本こちらの白いカードと一緒にキャストすることが難しいので、《貴族階級の嘲笑》《痕跡消し》よりも冷遇されることがほとんどです。

 実は白黒《黒死病》《黒死病》を打ち消せないと積み上げてきたアドバンテージをすべて持っていかれる所以結構負けるのでサイドインすることも検討しましょう。

《軍旗の旗手》

 ⇒対オーラ、ストンピィ、バーン等々、様々なデッキに対して投入を検討できる避雷針。《赤霊破》《紅蓮破》あたりでルールのごたつきがあるので、しっかりと整理しましょう。

 対オーラ、ストンピィ、バーンは積極的に出すイメージがありますが、他のデッキに対してサイドインした場合はあまり積極的に出すことはせず、「何をもって」出すのかのイメージを確実にしながら出しましょう。

《払拭》

⇒万能カード。相手のテンポを1マナで奪えます。先述していますが、《赤霊破》>払拭で青のスペルは消しましょう。バーンに対しては“入れざるを得ない”というカードに留まっています。案外ソーサリー多いですよねバーン。

《緑の防御円》

⇒対オーラ、ストンピィへのカード。

私は入れてました、絶対にストンピィに勝つ

《大祖始の遺産》《虚無の呪文爆弾》

⇒賛否両論のある墓地対策カードです。

 《粗石の魔道士》があると自由に持ってくることが可能で便利に感じますが、そもそも《古術師》をサイドアウトしているミラーがあったり、対トロンだと《大祖始の遺産》最序盤に設置するor重ね引きしないと相手の《記憶の壁》《ムラーサの胎動》を無効化出来ない、《大祖始の遺産》は自分の首も締め得るなど、様々な課題があります。
 私はサイドから抜いていましたが、メインボードに《粗石の魔道士》の恩恵を授かる形で採用しているリストは散見されていました。

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《孤独な宣教師》

⇒対バーン、ゴブリンへのカードです。

あまり強いと感じたことがないのですが、採用されているレシピは多いです。
 対ストンピィには6点ゲインしてくれます。めちゃめちゃ当たり前のことなんですが、《孤独な宣教師》をターゲットにしてきた相手の《焼尽の猛火》に合わせて《儚い存在》でブリンクすると死なずに1点ゲインします。

《ゴリラのシャーマン》《古えの遺恨》

⇒対親和、トロンのカードです。

 対親和には1枚で相手の土地をすべて割ることが出来る点で《ゴリラのシャーマン》が優れていますが、他の場面では概ね《古えの遺恨》が優れています。《古えの遺恨》がこのトピックの中で最も議論したい部分であり、先述したトロンの行動回数を減らすという話を再提議します。
 

 既に場に出てしまった《探検の地図》を先手番で除去できることや、カウンターし損ねたフィルター系を後腐れなく処理することが出来ることは対トロンで特筆に値することです。

 ジェスカイ氷雪の完全な嵌めパターンに《古術師》《儚い存在》による無限ブリンクで毎ターン《対抗呪文》を回収するムーブがありますが、トロン側はフィルター無しに複数回行動することは不可能である為、ここを《古えの遺恨》による制限、《古術師》ブリンクとで噛み合わせて封殺することが出来ます。サイド後の明確な勝ち手段を増やすことに繋がってこの《古えの遺恨》は対トロンへのマスターピースであると感じていますし、現存している通常のフリッカートロンに対しても同様のサイドボーディングは有効であると考えています。現行のトロンは例外ですが、土地破壊を採用しないのは上記のことと関連付けて議論できる部分です。
 

 また、ミラーマッチにおいても《古えの遺恨》はマスターピースになると考えていて、《粗石の魔道士》の採用に伴って《大焼炉》《古えの居住地》《教議会の座席》のアーティファクト土地を採用するレシピが増加していることがその一因です。
 《アーカムの天測儀》を失ったジェスカイ氷雪の脆さは先述している通りですが、フラッシュバックでアーティファクト土地を割ることで相手の機能不全を誘発できる可能性があるというのは、サイドインする理由としては十分に思います。《呪文づまりのスプライト》が届かないのも後押しですね。相手の《古えの遺恨》に対するリアクションで手札がかなり透けますし、やっぱりサイドインしましょう。

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《Mystic Remora》

⇒かなり多用途に亘って検討の余地があるカードです。

累加アップキープは真綿でゆっくりと首を絞めるように自身を苦しめていく一方で、すべての相手のリアクションカードへ1ドローを科すことができます。何度も述べている通りミラーマッチでは足し算の繰り返しでゲーム展開が行われますが、《Mystic Remora》一枚で地道な計算をすべて打ち壊すことができます。

対オーラ、対バーンでもサイドカードを引き込むのに便利なので是非サイドインしたいですね。

私事で恐縮ですが、パウパー日本選手権2019では《Mystic Remora》をメインから2枚搭載したジェスカイ氷雪を持ち込み、そのピーキーすぎる性能に逆に振り回される展開になってしまいました・・・。これで勝った試合もあれば、これが足枷となって負けた試合も多くあるので何とも言い難いところですが・・・。

総じて評価の難しいカードです。余談ですが、MOで一時期14チケまで跳ね上がりました。

《天界のほとばしり》

⇒対オーラ、ストンピィに対するカードです。

ほとんど警戒されないので、《祖先の仮面》を付けて一撃必殺を狙ってきたオーラにドヤ顔で撃ちこむことができます。相手は泡を吹いて倒れる。

 ストンピィに対しては《リバー・ボア》を倒せるというだけで価値があります。除去の的になったクリーチャーを《巨森の蔦》《吠え群れの飢え》で強化してきた時に狙い撃ちましょう。アドバンテージ勝負に持ち込むための追加の除去です。






 

メジャーなサイドカードは概ね紹介できたと思いますが、抜けがあればご指摘下さい。

私の範疇でお答えします。

■ ジェスカイのその後

そして、《アーカムの天測儀》を失ったジェスカイ氷雪は無事死亡・・・と締めたいところですが・・・

Magic Online上の結果を見ていてもジェスカイは死滅したと考えられますし実際全く見なくなったのですが、その息吹は強者の手によって確かに守られ、新たな形で発展を迎えようとしています。

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禁止改訂以前のジェスカイ氷雪の妙手として知られる
Billster47によって再構築されたジェスカイ氷雪の新たな姿です。

 
《コーの空漁師》《きらめく鷹》といった優秀なクロック兼アドバンテージ源を排除し、《ボーラスの占い師》の採用によってスペルの獲得とアグロへの耐性をつけ、唯一の白いカードである《儚い存在》とのシナジーもそのままにしています。

《古術師》《熟考漂い》といったジェスカイでお馴染みだった面々も強力なコンボルートとして据え置きの採用です。
 

 しかしながら俯瞰して見た時これはほとんど青赤コントロールのように感じられますし、私がMagic Online上で扱ってみた感覚でも完全なコントロールデッキだなという感想がすぐに挙がりました。得てしてジェスカイ氷雪は飛行クロックで刻みながら対応を続けるデッキではなく、どっしりと腰を据えてひとつずつ回答を撃ち続ける古典的なコントロールへと昇華したのです。

 白い要素が薄くなったことにより、《痕跡消し《軍旗の旗手》《緑の防御円》といった対アグロの最強カード達が全く使えなくなったことに加え、青赤というカラーリングの性質上アグロに対しては《ボーラスの占い師》頼みである、という致命的な欠陥があります。昨今のアグロは《電謀》もあまり効きませんし・・・
 

 環境に黒系コントロールが増えたことによってオーラはその絶対数を減らしていますが、緑単ストンピィはトップメタの位置までしっかりと返り咲いています。緑単ストンピィをどう対処するのかがこのデッキの困難としてぶつかるところでしょう。
 

 また、トロンはいつまでたっても癌であり、《古術師》《儚い存在》コンボを積極的に決めることを終着点として以前よりも長いレンジで戦わなければなりません。《古えの遺恨》も使えませんし、禁止以前と同じく対トロンは不利のままでしょう。

■ おわりに

振り返ってみれば《アーカムの天測儀》を使用できた期間は半年ほどであり、Pauperにおける禁止改訂としては異例中の異例だな、と感じると共にその強さを改めて感じています(《宝船の巡航》ですらもうちょっと長かったのでは?)。

「ミラーマッチが難しいデッキはいいデッキ」なんて言葉もありますが、そっくりそのままジェスカイ氷雪に当てはまるでしょう。Pauper環境を“氷雪対その他”に仕立て上げたそのデッキパワーは計り知れません。プレイヤーの練度によっても全く強さが異なるデッキですし、デッキ、プレイヤー共々「擦れば擦るほど強くなる」というのもPauper環境だと中々無かったのではないでしょうか。

そんな貴重な体験を出来たという感謝と、このようにして自分の力の限り言語化を出来る環境を与えて下さったSEIGAさんにも感謝したいです。

ここまで読んで頂きありがとうございました!

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